「 」や、 『 』や、 【 】や

文章には、カギカッコがよく使われます。またコンピューターの普及に伴い、横書きが増えたこともあって「“ ”」もよく使われるようになっています。

カギカッコの使い分けをご存じですか?

まず、会話文で使います。

例1A……父が「今日の空は真っ青だな」と言った。

父が言った内容をカギカッコの中に入れます。この文章を次のように表現することもできます。

例1B……父が、今日の空は真っ青だなと言った。

これでも間違いではありません。ただ「例1A」の方が、会話文だということがよく分かりますね。

会話文の中に会話文が入ったときは、二重カギカッコを使います。こんな感じです。

例2A……父が「さっき母さんが『今日は天気がいいわね』と言ってたぞ」と言った。

カギカッコは、会話だけでなく、引用文にも使います。

例3A……夏目漱石の本に「吾輩は猫である」という文で始まるものがあったな。

また本の題名や、作品の名前を示すときは二重カギカッコを使います。

例4A……夏目漱石が書いた『吾輩は猫である』は、明治38年、雑誌『ホトトギス』への掲載が初出である。

なお「吾輩」は広報の場合「わが輩」と表記しますが、引用または書名などの場合は常用漢字にせず、元のままの表記を使います。こういう場合は、表記を変えてはいけません。

【 】は、注などを付けるときに使うことが多いようです。

例5A……漱石の『吾輩は猫である』は面白い。【明治38年、雑誌『ホトトギス』に初出】

さらに、物事を強調したいときなどにもカギカッコを使います。

例6A……漱石は「ネコ好き」だったのだろうか?

上記は、「ネコ好き」という言葉に特別の思いを込めて強調したいために、カギカッコを付けた例です。

カギカッコと句読点

カギカッコのある文章で、句読点が絡んでくると、表記に迷う場合が多いですね。カギカッコで終わる文章とか、カギカッコが並ぶ場合とか。

まずカギカッコで終わる場合。

例7A……父の口ぐせ「そんなヤツはおらんわ」。

文章が終わる場合は「。」が必要ですので、上記のようにします。ただし、カギカッコだけの文(会話だけの文など)の場合は、以下のように最後の「。」は必要ありません。

例7B……「そんなヤツはおらんわ」

カギカッコの前に「、」が必要か不要かも、分かりにくいですね。基本的には不要です。ただし、その位置で確実に切って読んでほしい場合は、入れてもかまいません。

例8A……父はいつも「そういうことは、母さんに言え」と逃げる。

カギカッコが並ぶときは、間に「、」や「・」を入れません。

例9A……父の口ぐせは「そんなヤツはおらんわ」「ほんまかいな」「ええ度胸しとるな」などだ。

カギカッコではなく、普通のカッコの場合、部分的な注釈を入れるときは、カッコの後ろに「。」を入れます。こちらの表記が一般的です。

例10A……父は口うるさいわけではない(ことが多い)。

著者名や状況解説などを文末にカッコで入れる場合は、句点(。)の後に入れます。この場合は、カッコの後ろで段落替えをした方がいいでしょう。

例10B……以下に父からの手紙の一部を紹介する。(原文のまま)

句読点とは関係ありませんが「“ ”」は極力使わないようにします。とはいえ使ってはいけないわけではありません。「 」や、『 』などと同じように使います。なお縦書きの場合は、横書きで使う「“ ”」を使わないのが基本です。使う場合は、縦書き用の「かっこ かっこ」を使います(実際の記号はこれ「〝〟」)。代わりに全角の「“ ”」を回転させるなどすることもありますが、避けた方がいいでしょう。

例11A……学校をさぼったから“天罰”が下ったな。

たかがカッコですが、統一した使い方をしないと、紙面が見づらくなります。注意して使ってくださいね。

※表記についての詳細は『記者ハンドブック(共同通信社刊)』などをご覧ください。